めざせ8020~歯が元気なら体も元気~

NHKテキスト「きょうの健康」にて掲載された、「めざせ8020」の記事をお届けいたします。

8020の記事
健康寿命は歯で延ばす
日本人の平均寿命は、平成27年において男性80.79歳、女性87.05歳であり、世界でもトップクラスの長寿国となっています。しかし、寿命が延びればいいのかというと、そうとばかりはいえません。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」、つまり自立して健康に暮らせる”健康寿命“を延ばすことのほうが、私たちにとってはより重要なことといえます。健康寿命と平均寿命の差は、平成25年で男性約9年、女性約12年ですから、この差を少しでも短くできれば、介護が必要な期間を短くし、生活の質を高めることになります。 「ピンピンコロリ」は健康寿命の延伸で実現できるのです。
ところで、健康と深い関わりをもつのが食べ物です。ヨーロッパのいくつかの調査では、果物や野菜をとっている人は心血管系疾患などによる致死リスクが低下するという結果が発表されています。しかし、食べ物をしっかりとるためには、噛める歯がなくてはなりません。ここで興味深い調査結果があります。歯の数と栄養状態とは相関関係にある、あるいは歯を失うと栄養状態が低下するというものです。歯が抜けたままで生活していると、栄養状態が悪化し、さまざまな疾病を引き起こす可能性があるといえるでしょう。
それなら入れ歯を入れればよいということになりますが、入れ歯を入れても栄養状態は改善しないという報告があります。高齢者の場合は、入れ歯によって咀嚼能力を向上させることと合わせて、栄養士による栄養指導によって栄養状態を改善させる必要があると考えられます。
もう一つ、歯と健康の関係で見逃せないことがあります。それは、歯はただものを噛むだけの道具ではなく、口の中の感覚器官として働いたり、口の中の食べ物の形状を脳に知らせたりするなど、脳や中枢神経と密接に関わる咀嚼システムの一部であるという点です。噛むことは、いわば脳へ刺激を与えて脳の健康維持にも役立っているのです。
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歯と寿命についての調査があります。40歳以上の宮古島の住民を対象にした15年間にわたる調査で、80~89歳の調査期間中の生存率では機能歯(調査開始時の使える歯の総数) が10本未満の群と10本以上の群を比較すると、10本以上の群において、男性では約2倍、女性では約1.5倍の生存率となりました。歯の数は寿命とも関わっていることを示すものといえます。
高齢になると、つい歯の手入れを怠りがちになりますが、1本でも多く歯を残すことができるようケアをし、もしなくした場合には入れ歯によって咀嚼機能を保ちながら適切な栄養をとることを心がけていただきたいと思います。もちろん、適度な運動も忘れないようにしましょう。
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水口俊介
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授。日本咀嚼学会理事長。
全部床義歯において、コンピューターを活用した診療支援システムの研究開発に携わる。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授。日本咀嚼学会理事長。
全部床義歯において、コンピューターを活用した診療支援システムの研究開発に携わる。

8020さんのご紹介:健康の秘訣はグラウンドゴルフと規則正しい食事

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輕部忠志さん
年齢:80歳
歯の数:26本
輕部忠志さん
年齢:80歳 歯の数:26本

月に1、2回は山歩きに行くという輕部忠志さん。
手放せないのはカメラだ。高校生のときにカメラにはまり、今は18人の会員を擁する写真同好会のまとめ役として活躍している。山を登ってベストスポットまでたどり着くには足腰が丈夫でなければならないこともあり、健康作りには余念がない。グラウンドゴルフは月曜日から金曜日まで、お天気がよければ欠かさず参加している。8ホール、4ラウンドはかなりの距離を歩くことになる。立ったりしゃがんだりの動きもよい運動になるという。さらに、土曜日と日曜日は、奥さまと2人で6キロの散歩と決めている。

これだけ体の維持・管理に気をつけている輕部さんだが、食事に関しては関心がない。むしろ、「食事は家内との戦いですよ」という。輕部さんは大の野菜嫌いなのだ。仲の良い2人も、食事中は野菜を間に「食べて」「いやだ」の喧嘩が始まるらしい。では、80歳で26本もの歯を保ってきた秘訣は何かと聞くと、「半年に1回の歯の健診は欠かさないですよ。何もなくても、必ず歯医者さんでみてもらってます。それが26本につながっているのかもしれないですね」という。規則正しい食生活も見逃せない。毎日、食事は朝7時、昼12時、夜18時30分と決めている。運動と規則正しい食生活は輕部さんの健康維持の要となっている。

月に1、2回は山歩きに行くという輕部忠志さん。手放せないのはカメラだ。高校生のときにカメラにはまり、今は18人の会員を擁する写真同好会のまとめ役として活躍している。山を登ってベストスポットまでたどり着くには足腰が丈夫でなければならないこともあり、健康作りには余念がない。グラウンドゴルフは月曜日から金曜日まで、お天気がよければ欠かさず参加している。8ホール、4ラウンドはかなりの距離を歩くことになる。立ったりしゃがんだりの動きもよい運動になるという。さらに、土曜日と日曜日は、奥さまと2人で6キロの散歩と決めている。

これだけ体の維持・管理に気をつけている輕部さんだが、食事に関しては関心がない。むしろ、「食事は家内との戦いですよ」という。輕部さんは大の野菜嫌いなのだ。仲の良い2人も、食事中は野菜を間に「食べて」「いやだ」の喧嘩が始まるらしい。では、80歳で26本もの歯を保ってきた秘訣は何かと聞くと、「半年に1回の歯の健診は欠かさないですよ。何もなくても、必ず歯医者さんでみてもらってます。それが26本につながっているのかもしれないですね」という。規則正しい食生活も見逃せない。毎日、食事は朝7時、昼12時、夜18時30分と決めている。運動と規則正しい食生活は輕部さんの健康維持の要となっている。

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NHK出版 NHKテキスト「きょうの健康」2016年12月号掲載