NHKテキスト「きょうの健康」にて掲載された、「めざせ8020」の記事をお届けいたします。

めざせ8020 第12回

生活習慣病の予防に歯周病の治療を

歯周病は日本人の幅広い年代で見受けられる病気で、糖尿病や脳卒中などと同じ生活習慣病のひとつです。歯周病は年齢が上がるとともに増加し、40代あたりから進行した歯周病の人が急激に増え始めます。歯周病はあまり自覚症状がないため、歯がグラグラしたり、歯の根が出てしまったり、症状がかなり進行して初めて自覚する人も多いという厄介な病気です。

それだけでなく、歯周病は肥満のほか糖尿病、肝炎など全身の病気と密接に関係しているという研究結果が報告されており、油断していると深刻な病気を引き起こしたり、悪化させたりしている可能性もあります。

5年間にわたって肥満と歯周病の関係について追跡研究した結果を見てみると、肥満度を示すBMI(体格指数)が高い太り気味の人ほど、調査開始時より歯周病が悪化していたことがわかりました。この傾向は男性より女性に顕著でした。

また、歯周病と糖尿病の関係についてもわかってきています。歯周病の場合、歯と歯ぐきの間のすき間(歯周ポケット)で増殖した菌が歯ぐきの炎症を悪化させ、炎症物質が血液中に入り、インスリンが効きにくくなって血糖のコントロールが悪くなります。逆に、高血糖の状態では体の免疫力が低くなって歯周病が悪化してしまいます。そこで、歯周病にかかっている糖尿病の患者さんに対して歯磨き指導を行ったところ、血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cが低下するという結果が出ました。このことから、糖尿病の予防や改善に歯周病治療が役立つ可能性があると考えられます。逆に、同様の患者さんに対して糖尿病の治療を積極的に行うと、歯ぐきからの出血は少なくなりました。これは、体が活性化して毛細血管の機能が改善されたことで歯ぐきからの出血が減っているのだと考えられます。

歯周病が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症に関わっていることも報告されています。NASHを発症している人は、歯周病菌のなかでも非常に強力なポルフィロモナス ジンジバリスという菌の保有率が高いのですが、この菌を保有しているNASHの患者さんに対し歯周病の治療をしたところ、肝臓に疾患があると血液中で増加する物質(ASTやALTと呼ばれる酵素)の数値が改善されたのです。動物実験ではジンジバリス菌に感染すると、さまざまな病気を発症することがわかっています。

歯周病は慢性炎症であると同時に、体にとっては炎症物質の供給源にもなって、さまざまな臓器に悪影響を与えます。それだけに口腔ケアは大切で、定期的に歯科医師を受診し、歯のクリーニングなどの口腔ケアをしたいものです。

和泉雄一

東京医科歯科大学大学院教授。専門は歯周病、歯周組織再生治療、生体材料。日本歯周病学会理事長、日本歯科保存学会理事などを務める。多数の難治症例を手掛けている。

8020さんのご紹介:30年以上続く習慣はお風呂で歯磨き

角田由美子さん

年齢:82歳 歯の数:23本

今までに67カ国を訪れたという角田由美子さんは、現役の耳鼻咽喉科の医師。といっても、現在は仕事をするのは月に数日で、旅行を楽しんだり、45年来のママ友8人と、月に1回村山リウの「源氏物語」のテープを聞く会を持ったり、ご近所の方々とバスをチャーターして日帰り旅行に行ったりと忙しい。さらには、社交ダンス、茶道、ゴルフ、書道、ボランティアと、カレンダーは2カ月先までびっしり埋まっている。

そのパワーの源は好奇心だそうで、なんでも自分で見たり聞いたり、体験するのが信条。日々の生活を楽しむなかで、同世代の友人から孫のような世代の友人まで、幅広い年齢層の人との交流が広がり、それがさらに活動の場を広げている。

毎日の食事について聞くと、「昔から、患者さんには1週間単位で栄養バランスを考えてね、と伝えてきたので、私もそうしていますよ。でも、基本的には今日食べたいと思ったものを食べるようにしているわね」。体の声に素直に従って、食べたいものをしっかり食べるようにしているとのこと。

食後には簡単に歯をブラッシングをするよう心掛けているが、就寝前は半身浴をしながら時間をかけてていねいに磨く。歯間ブラシも必須だ。30年以上続けている習慣で、これだけは海外でも欠かさないという。

NHK出版 NHKテキスト「きょうの健康」2017年12月号掲載