めざせ8020 第16回

むし歯菌が住み着きにくい口内環境とは

むし歯の子どもの割合は平成29年度では、幼稚園で35.45%、小学校で47.06%というデータが文部科学省から発表されています。いずれも10年前に比べ約18%も減っています。減ってきたとはいうものの、北欧の子どもたちに比べるとまだ多く、もっと少なくするためにはどうしたらいいのか、それが私の研究課題の一つでもあります。

生まれたばかりの赤ちゃんの口のなかにはむし歯菌はまったく存在しません。そこで、子どものむし歯予防は、むし歯菌の感染(伝播)予防から始まります。

基本的な対策としては、
①感染源になる可能性のある家族(特に母親)のむし歯菌を減少させる。
②感染経路を遮断するため、家族の使った箸やスプーンなどを共有しない。
③子どもに砂糖を与えるのを控える。

などが挙げられます。

少し捕捉説明をしておきましょう。むし歯菌は口のなかに砂糖があると定着しやすくなります。むし歯菌は砂糖をエサにして不溶性グルカンというネバネバした物質をつくり、歯に強固に付着します。

ところが、同じように甘いものでもキシリトールでは、不溶性グルカンがつくられないため、歯からはがれやすくなり、むし歯菌は定着しにくくなります。さらに、むし歯菌の数も減少します。

妊婦を対象とした私の研究でもキシリトールの有効性がわかりました。妊娠6か月から出産後9か月までの13か月間、キシリトール入りガムを噛んだお母さんのグループと、噛まなかったお母さんのグループのむし歯菌の数を調査しました。子どもたちについては、むし歯菌の感染率を2歳になるまで追跡しました。キシリトール入りガムを噛んだお母さんはむし歯菌数が減少し、さらにその子どもたちの感染率は、ガムを噛まないグループより有意に少ないことがわかりました。キシリトールにむし歯菌の母子伝播予防効果があることが実証されました。

キシリトールの量は、1日5~10gが効果的です。しかし、先ほどのお母さんたちの平均は1日約3gでした。たとえ少なくても、継続的にキシリトールをとることが大切だと考えています。

キシリトールはむし歯菌に作用するものですが、歯周病が気になる高齢者にも無関係ではありません。キシリトールの摂取によって歯垢が歯面からはがれやすくなるため、間接的に歯周病も予防しやすくなります。

お子さん、あるいはお孫さんの健口・・のためには、家族がまずご自身の口のなかを健口・・にすることが大切です。「皆は一人のために」「一人は皆のために」。子どものむし歯予防とは、家族全員のチームワークが成功のカギとなる、健康づくりの団体戦といえます。

仲井雪絵

静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科教授。専門は小児歯科学。キシリトールの有効性の研究から、「マイナス1歳から始めるむし歯予防」を提唱。

8020さんのご紹介:健康づくりは 習慣化から

松尾恭子さん

年齢:81歳 歯の数:22本

80歳までヘルパーをしていたという松尾恭子さん。今は、週のうち2日、デイサービスと特別養護老人ホーム(特養)でボランティアをしている。デイサービスでは利用者の話し相手や食事のお世話、ゲームの手伝いなどを行い、特養では洗濯物を畳むなど、仕事は山のようにある。もっとも、その帰り道はボランティア仲間とランチを楽しみ、「夫の悪口を言い合ってストレス解消」と、息抜きも忘れない。

さらに、週に1回は健康体操に通い、1時間ほど音楽に合わせてストレッチなどで体を動かしている。「健康に関する本はよく読みますね。健康番組もよく見ています。いいといわれることは、やってみるほうですね」と、どこまでもアクティブだ。20年以上前から、朝は肩、就寝前は股関節のストレッチを欠かさず、最近では嚥下障害が起きないよう口の体操も加わったそうだ。

それだけではない。スマホに歩数計のアプリを入れ、一日の歩数をチェックしている。毎日、ほぼ8000歩は歩いていて、買い物はできるだけ遠くまで行くと決めている。

歯の健康についても抜かりなく、朝起きたらまず歯磨きをして口のなかの細菌を除去。歯間ブラシ、舌ブラシも習慣化している。「特別歯にいい食べ物にしようと思っているわけではないけれど、お味噌汁のだしの煮干しはそのまま食べてますね。あとは、主人がつくっている野菜を蒸してたっぷり」。よく噛む習慣が、自然についているようだ。

NHK出版 NHKテキスト「きょうの健康」2018年08月号掲載