めざせ8020 第22回

口腔乾燥症はよく噛むことで予防

舌が歯にすれる、口の中がネバネバする、乾いたものが食べにくいといったことはないでしょうか。

こうした症状を引き起こす原因は、口腔乾燥症(ドライマウス)です。口腔乾燥症になると、前述のようなことだけでなく、舌や歯の表面に食べ物がつきやすくなって、虫歯や歯周病になりやすくなります。

口腔乾燥症の原因としては、加齢や薬の副作用などが挙げられます。唾液が分泌される唾液腺は筋肉によって支えられていますから、加齢によって筋力が低下したり唾液腺が萎縮すると、唾液の量が減ってしまいます。また、薬には口の渇きが副作用として表れるものが多く、特に高齢者がよく服用する降圧剤や過活動膀胱治療薬、抗パーキンソン病薬などは口腔乾燥症を発症させることが多いといわれています。

一方で、口腔乾燥症の高齢者には、口腔カンジダ症や舌痛症、味覚障害の人も多くみられます。口腔カンジダ症とは口腔内にカンジダという菌が増殖してしまう病気。舌痛症とは舌の先や縁がヒリヒリと痛む症状が現れる病気。味覚障害は味がわからなくなったり、異常な味を感じる状態です。これらは、口腔乾燥症を中心に相互に関係して起こると考えられます。また、これらが絡み合って悪化する可能性も高いため、気になる症状があれば、早めに歯科医を受診することをおすすめします。唾液で口の中が潤っていることは、口の中の健康の絶対条件です。

口腔乾燥症を防ぐには、唾液が十分に出るようにする必要があります。そのためには、ガムを積極的に噛むとか、食事のときに今までより1回でも2回でも多く奥歯でしっかり噛むことを意識するとよいでしょう。また、マッサージも効果的です。特に薬剤による口腔乾燥症は、咀嚼やマッサージの刺激を加えれば唾液が出せるようになります。あきらめることはありません。私がおすすめするのは唇の内側、舌の奥や付け根などに分布する小唾液腺のマッサージです。これは大阪大学の阪井丘芳先生が提唱されているもので、大変効果的です。こうしたマッサージのほかに、口周りの筋肉を鍛えたり、口腔用の保湿剤を使用したり、舌ブラシで舌の清潔を保つなどのケアも大切です。

口は食べたり、笑ったり、泣いたり、話したり、人の幸・不幸が集まる場所です。ただ汚れが取れればいいというのではなく、すべてが集中しているデリケートなところだという意識をもってケアをしていただきたいですね。

山崎裕

北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科分野高齢者歯科学教室教授。高齢者を中心に、歯科心身症の研究に取り組む。

8020さんのご紹介:健康のもとは運動とライフワーク

高木俊毅さん

年齢:82歳 歯の数:21本

体力維持のために週に1回、リハビリ型デイサービス施設で、軽い運動をしている。その目的は、最期まで自分のことは自分でできるようにするためだ。それには、歩くこと、食事をすること、排泄、着替え、この4つは必須だと髙木さんはいう。

腰と膝関節を悪くしていたところ、ケアマネジャーにすすめられて要支援の認定を受けて通うようになった。1年半が過ぎ、以前は杖が必要だったが、今は杖なしで歩いている。「歩くのに苦痛がなくなった」と髙木さん。

ほかに、1日5000歩以上を目標に歩いている。また、つま先で立ったり、立ったままでパソコンを打ったり。これが意外にいい運動になるのだそうだ。

もう1つ心がけているのが食事だ。食べ過ぎないことを第一にしており、昼食はできるだけ食べないようにしている。「お腹がすいたという感覚が気持ちいい」そうだ。そして、朝食は毎日、パン、きな粉とすりごまと刻んだリンゴをかけたヨーグルトと決めている。夕食では肉や魚、野菜をまんべんなく食べる。

一方、精神的には観音信仰を支えにしている。さらに、ライフワークとして、鎌倉時代に東大寺の再建に尽くした重源上人について調べている。以前は、調査のために地方にも行っていたが、最近はなかなか行けないという。パソコンに向かってコツコツとまとめる作業こそが、ライフワークの楽しみといえそうだ。

NHK出版 NHKテキスト「きょうの健康」2019年8月号掲載