めざせ8020 第30回

唾液は健康のバロメーター

 口が渇く、口の中がネバネバする。そうした状態は、唾液の分泌量が減っているために起こるドライマウスかもしれません。

 唾液には健康を維持する有効成分が含まれています。なかでも現在、特に注目されているのが唾液中分泌型免疫グロブリンAやラクトフェリン、リゾチームという抗菌物質です。これらは、外界から入ってくるウイルスや細菌から体を守っています。逆にいえば、唾液が減ってしまうと、感染症にかかりやすくなるのです。

 新型コロナウイルス感染症の予防にも唾液の分泌は重要な役割を担っています。

 ドライマウスの原因はいくつかあります。一つ目は、薬の副作用です。ほとんどの薬は、副作用としてドライマウスが現れます。たくさんの薬をのんでいる高齢者は、それだけドライマウスになりやすいといえます。

 二つ目に挙げられるのがストレスです。唾液はストレスがかかると減少する傾向がありますが、リラックスするとすぐに出始めます。コロナ禍において、人と話したり、趣味などの楽しみを制限していると、ストレスがたまってドライマウスになる可能性は高くなります。

 三つ目は、筋力の低下です。唾液を分泌する唾液腺は周囲の筋肉によって刺激されることで唾液を出しますから、筋力の低下は唾液の分泌量の低下につながります。これがドライマウスを引き起こします。

 では、どうすればドライマウスを予防できるのか。まずは、必要以上の薬の服用をやめ、薬に頼らない生活を送ることです。また、手洗いやうがいなどを励行しながらストレスをためないように友人などとのコミュニケーションを楽しむこと、さらに筋力低下を防ぐためにガムを噛んだり、歯ごたえのあるものをよく噛んで食べることです。うまく噛めないようであれば、歯科医院で噛めるように口内環境を整えたいものです。

 気をつけたいのは口が渇いた状態が続くシェーグレン症候群という疾患です。これは中高年の女性に多く、膠原病のひとつとして難病に指定されています。シェーグレン症候群と診断するには詳しい検査が必要です。口の渇きが長引いたり、食べ物が喉を通りにくいなどの症状があるときは医療機関を受診しましょう。

斎藤一郎

鶴見大学歯学部教授。専門は唾液腺の機能や病態の形成機序、再生機構。長年シェーグレン症候群の研究に従事。現在、ドライマウス研究会代表、日本抗加齢医学会理事を務める。

8020さんのご紹介:父親の愛情が歯の健康の源に

山下欣子さん

年齢:83歳 歯の数:25本

 「30歳で2人目の子どもを産むまで、歯医者さんには行ったことがないんですよ」と山下欣子さんはいう。子どものころは、冬には父親が近くの川で取ってきた魚をいろりで焼き、天井につるして保存食に。夏には、この魚にミカンの皮を乾燥させたものなどを加えてふりかけにして食べていたという。体が小さかったことを気にかけ、父親が「大きくなれ、大きくなれ」と育ててくれたことを今も感謝している。

 大切にしているのはぬか床。母親から引き継いだ80年ものだ。「おばあちゃんのぬか漬けが一番おいしい」と孫から喜ばれるのが、山下さんにとっても喜びだ。

 書くことが好きで、日記は40年間続けている。内容は、日々の献立を中心に、季節の変化など。去年の同日にまったく同じ献立をつくっていることがあり、自分でも驚くことがあるという。

 新聞の読者欄に投稿したところ採用され、それをきっかけに手紙をやり取りするようになった人もいる。「ペンフレンドですよ。もう20年も続いています。遊びに行ったこともあるの」。

 1日3回の歯磨きは欠かさない。特に夜の歯磨きはまず歯磨き剤なしで磨き、次に歯磨き剤をつけて磨くという念の入れよう。そして、月に一度はかかりつけの歯科医院に行き、ちょっとした虫歯などはそこで治療してもらい、磨き残しはきれいにお掃除してもらっている。「磨いているつもりなんだけれど、苦手なところがあるんだわ」。

NHK出版 NHKテキスト「きょうの健康」2020年12月号掲載